2017.11.08縁をたぐり寄せ、絆を深めた集合写真
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。
ご遺族の方へ、手の届くご提案を
入社して1年が過ぎたころでした。当時、私は参列者を誘導したり進行の確認をする役割を担っていました。ご遺族の方や参列者のみなさまと密に関わるなかで、仕事へのターニングポイントとなったエピソードをお話ししたいと思います。
1年前までの私は大学を卒業したばかりの社会人1年目。
100%の力で仕事と向き合いたいのに、ご葬儀という厳かで神妙な儀式に対してかなり萎縮しておりました。お客様に対しても積極的な行動を起こす勇気がなかなか出ませんでした。
故人様とのお別れが刻一刻と近づく中、悲しみに暮れているお客様に対して、こちらから何かを提案するという事が積極的になかなかできず、自分でももどかしい気持ちでいっぱいでした。
誰しも笑顔で見送れる、集合写真の魔法
あるお葬式のときでした。
3歳の女の子と6ヶ月になったばかりの男の子が、故人様のお孫さんとしていらっしゃいました。
お葬式にお子様がいると、どうしても飽きてしまい、外に連れ出したり、乳児であれば眠ってしまわれるので、控え室で寝かせている事も多く、ご遺族の方もお子様のペースに合わせがちです。
このときもそうでした。
生まれてまだ半年経ったばかりのお子様だったので、お母様はもちろん、ご親族が代わる代わる抱っこしてあやしておりました。
3歳の女の子はお父様と一緒にお外に出て野花を摘んだりしています。
その故人様の息子さんは県外で働かれていて、なかなかゆっくり帰って来ることができなかったとおっしゃいました。
「もっと孫に会わせてやりたかったんだけど、こういうものは突然来るものなんですね…」
と肩を落として後悔されておりました。
お仕事の都合でなかなか帰って来ることができず、この日を迎えられたのでした。
私は息子さんの後悔の念を今できる最良の方法で払拭できないものかと考えました。
ご葬儀はお別れの儀式だからこそ、故人様が生前あまりお会いできなかったお孫さんが笑顔で故人さまをお見送りすることができないかと考えました。そこで「この方法しかない」と意を決して、初めてこの言葉を口にしました。
「みなさんでお写真を撮りませんか?」
すると、
「いいんですか? ぜひお願いします!」
と、お返事が返ってきました。
「全員の方が一緒に入るように、お子様が目を覚まされた時に撮りましょう」とお伝えました。
まもなくして、お子様も目を覚まされご機嫌な表情で連れられてきました。
久しぶりにお会いしたご親族の方も多くいらしたので、皆様お話しは尽きないようです。
明るい皆様だったので、私も比較的リラックスしてカメラを向けることができました。…と言いながら、緊張の色を隠せなかった私。
カメラのキャップを取るのを忘れたまま「はい、チーズ!」と言っちゃったのです。
すかさず3歳のお姉ちゃんから
「もう!カメラマンさんしっかりとってよね〜」とのお叱りを受けました(汗)。
その場は大爆笑。緊張してガチガチだった私の心も和らぎました。
その時に撮れた写真は言わずもがな、自然な笑顔でカメラに目を向けたみなさまが写っていました。
お孫さんの笑顔、ご家族、ご親族の優しい表情を見て、故人様も安心して旅立たれたのだと確信しております。
1年前の自分は、お客様から「写真を撮ってもらってもいいですか?」という言葉をかけられてお撮りするという受け身でいましたが、最近では集合写真を撮っていらっしゃるのに気づきましたら、こちらから「お撮りしましょうか?」と声がけをするようにしています。
ご葬儀は縁をたぐり寄せる大切なセレモニー
ご葬儀はとても悲しいシーンです。
このご時世、なかなか忙しくて会えないご家族やご親族が、お葬式という儀式によって一堂に会し、故人を偲びながら近況を確認し合え、ご家族やご親族の絆というものを再確認できる時間でもあるのでは…と、このお仕事に携わり、お見送りのお手伝いをさせていただく度に感じております。
それぞれの生活の中心は違っても、少しずつ離れていたものを故人様が手繰り寄せてくれ、最後にまた縁を結びなおしてくれるものもご葬儀なのではないかと思っております。
そしてそれを目に見える形で表すのが「集合写真」なのだと感じます。
私がお撮りすることで、ご遺族様一人も欠けることなく、皆様の想いを形に残していただけるのではないでしょうか。
悲しみの中に咲く小さな蕾のような心温まる出来事に触れるたびに、ご葬儀にはそのご家族にしかないストーリーが生まれていくのだと思わずにいられないのです。