2019.10.31指輪に込められた色褪せない母との想い出
母が一番気に入っていた指輪を、お棺の中に入れたい
納棺の際のお話です。
あるご家族が、お母様を亡くされました。
故人の娘さんから、お母様の想い出をうかがう機会がありました。旅行が好きなご家族だったそうで、幼少期からいろんなところへご家族で出かけられていたそうです。
娘さんは、3人兄弟の真ん中で、唯一の女の子。旅先でお母様とお2人、想い出としてアクセサリーを買うのが恒例となっていました。
ある旅行でのこと。海が見えるお土産屋さんで、とても素敵なサンゴのネックレスと指輪を見つけました。お2人はとても気に入り、娘さんはネックレスを、お母様は指輪を購入されたそうです。淡いピンク色が美しいサンゴでできたお揃いのアクセサリー。
それからというもの、お母様はとてもその指輪を大切にお持ちになっており、お出かけする際はいつも身につけていたそうです。
淡いピンクのサンゴの指輪。
その指輪を身につけた生前のお母様は、きっと大変お似合いになったのだろうと、想像ではありますがそんなことを思いながらお話をうかがっていました。
最期のお別れの時を大の葬祭で迎えるにあたり、娘さんから、
「母が一番気に入っていたサンゴの指輪を、お棺の中に一緒に入れることはできませんか?」
とご要望をいただきました。
しかし火葬場の方からは、棺に物を入れると、お骨を痛めたり、火葬場の機器が破損する可能性があるため、物を入れないようにと言われております。
「申し訳ないのですが、入れられません。」
そうお答えするのがマニュアルとしては正しいのですが、私たちスタッフは、ご遺族の想いをどうにかして表現できないかと考えました。そしてこのようなお答えを差し上げました。
「もしよろしければ、指輪をお母様の骨壺の中に入れてさしあげてはいかがでしょう?」
せっかく美しいピンク色の指輪なので、楽しい思い出とともに色褪せないよう、そっとお母様のお骨の中で一緒に眠っていただきたかったのです。
娘さんも、
「焼いてしまうより、お母さんもこの綺麗な指輪をずっと持ち続けることができるね」
と、目に涙を浮かべながら、口元はそっと笑みを浮かべながら、眠っているお母様に語りかけていらっしゃいました。
大の葬祭では、ご遺族の想いを心で向き合い、おうかがいすることで、ご遺族のご意向にしっかりと耳を傾けていけるようにこれからも努めてまいります。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。