2019.3.20当たり前のことほど大切に。 案内看板にまつわるエピソード
たかが案内看板、されど案内看板
葬儀社としての仕事の一つに、案内看板を立てるという業務があります。
故人様が逝去された際、それをお伝えする手段の一つとしてお忙しいご遺族様の代わりに、ご近所の方や皆様に訃報をお知らせする看板を立てます。
誰しも一度は見たことがある光景だと思いますが、看板には故人様のお名前、喪主様のお名前、そしてお通夜とご葬儀の日時、葬祭場の名前などが書かれております。
とくに、この地域は車社会なので、瞬時にしっかり確認ができるように、文字を見やすく、時間も分かりやすく見せる必要があります。
看板を紐で固定し結ぶ時には、残りの紐が風でピラピラとなびかないように、そして見た目もきっちりと見えるよう、かなり注意して立てております。
故人様の訃報を知る最初の手段が、この看板だったという方も多いので、しっかりとして差し上げることこそ、私たちの使命だと感じております。
案内看板があったから気づいた、大切なご家族のご葬儀
最近、看板にまつわる、ある出来事がございました。
半年ほど前に、ある地域に移住されたご家族がいらっしゃいました。
そのご家族は、移住してまもなく、近くに一人暮らしをしているおばあさまと仲良くなったそうです。
そのおばあさまは、家庭菜園の野菜ができれば、通りすがりに「持って行かんか」と声をかけてくださったり、「小さい子がいての家事は大変だろうから、夕飯のおすそ分けよ」と差し入れていただいたり、何かと気にかけてくださったそうです。
そんなある日、その地区に訃報を知らせる看板が立ちました。
故人様は、おばあさまの旦那さまだったのですが、
移住したご家族からすると
「苗字は一緒だけど、おばあちゃんの旦那さんで合っているのかなぁ」と戸惑ったそうです。
移住したご家族がいうには、実はおばあさまには、施設に入っている旦那さまがいらっしゃったことは聞いたことがあったそうですが、旦那さまの下のお名前までは聞いたことがなく、さらに、いつも「おばあちゃん」と呼んでいて、おばあさまの下のお名前も存じてなかったそうなのです。
そしてまた困ったことに、この地区によくある苗字だったこともあり、確信が持てず戸惑っていたということでした。
まだそこまで親密になっていないご近所の人に聞くのも、はばかられるとのことで、弊社のほうに
「○○地区に出ているご葬儀の案内は○○様のご家族の方でしょうか?」
とお電話をくださったのです。
私は相違ないことをお伝えすると、
「こちらに移住してきてからとてもお世話になってるので、お通夜に行こうと思います」とのこと。
「故人様はもとより、ご遺族様もさぞお喜びになると思います。お気をつけていらっしゃってくださいませ」とお伝えしました。
そして、他にもこの地域のご葬儀にまつわることなどをご質問されたので、お答えできる範囲でお話をさせていただきました。
その際、移住されたご家族から
「あの看板がなかったら、うちはご葬儀に気づかないままだったと思います。いつものご厚意を仇で返すところでした」と、丁寧にお礼まで言っていただきました。
その土地に越してきて間もない方にとっては、大切な方のご家族のご葬儀をないがしろにしたくなかったのでしょう。間接的にではありますが、その手助けができたこと、本当に良かったと安心しました。
そのとき、看板の役割をしっかりと全うできたことを確信しました。
再認識した、案内看板の役割と葬儀への向き合い方
私はご葬儀の案内看板を立てる時にいつも思う事があります。
それは、数ある葬儀社のなかから弊社を選んでくださった感謝の気持ちを忘れてはいけないということ。
看板を立てる時には必ず右肩下がり、左肩下がり、前向き、後ろ向きいうことのないように「ピシャッ」と真っすぐに立ててあげなければいけません。
ご近所の方や皆さんに報告するためには、早めに立て、
ご葬儀を終えたら、回収は早めにしなければいけない。
そのことを念頭に置き、今まで看板を立ててきました。
まずは数ある葬儀社のなかから弊社を選んでいただいたことへの「感謝の気持ち」、
そして「これからしっかりお世話させていただきます」という気持ちを抱きながら、最後に一礼をします。
看板を立てる時にはいつも、そういう気持ちで立てております。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。