2019.1.15別れのエピソードに花を添える、心で動くお手伝い
目次
マニュアル以上のものを得る、ご葬儀との向き合い方
葬儀運営チームへ研修に来て約1ケ月が経とうとしています。お客様と関わる時間が増えて、やりがいを感じている今日この頃です。そして私のなかで、考え方が少しずつ変わってきたことに気付かされる出来事がありました。
私たちの仕事には礼儀はもちろん、お別れの儀式に失礼があってはいけませんので、マニュアルというものが存在します。それを徹底して覚えること、ほかの先輩社員の動きを見て学ぶことは大前提。自分が同じようにできるかと問われれば、まだまだ難しいことだらけです。
あらゆるご葬儀に携わっていくなかで分かってきたことは、マニュアルには載っていない【心で動く】ということでした。
お別れのシーンに合った寄り添いを
実際にご葬儀のお手伝いをするなかで思うことや感じることなど、突き動かされる気持ちを抱くことがあります。あらゆるシーンに寄り添い、行動することを学んだきっかけとなったシーンをご紹介します。
故人様と最後のお別れに花を手向けるお手伝い
ご葬儀では、出棺時に棺のなかにお花を入れます。
マニュアルには「お声をかけて棺の周りに集まってもらう」とあったので、お側にいらっしゃった方に「どうぞ前の方へ」とお声がけしました。
すると「私は遺族じゃないけどいいのでしょうか?」と一人の女性から尋ねられました。
もちろん、「どうぞ」とお伝えしたのでした。この方は故人様のお隣に住まわれている方で、泣きながらお花を入れて別れを惜しむ姿を私は忘れることはないでしょう。きっと故人様とこの方にしかわからない繋がりがあるんだろうと感じました。
一緒に悲しみを分かち合いたいと思う気持ちを抱く
また別のご葬儀での話です。
故人様は近所でも評判のガーデニングの達人だったそう。それを聞かせてくださったのは隣保班の女性でした。その方はお花を手に取りながら、深いため息をつかれ、悲しそうな顔をしていらっしゃったので、「すごくいい方だったんですね」と思わずお声をかけてしまいましたが、そこから故人様の素敵なお人柄がうかがえるお話を聞くことができたのです。
隣保班の女性は、お庭で家庭菜園をしているそうで、故人様の庭からその家庭菜園までは小道を挟んでお向かい。同じようにお庭に出てお花を育てている故人様とよくお顔を合わせていたとか。
春はキンギョソウ、夏は紫陽花、秋はスプレーマム、冬はクリスマスローズを切り花にしてくださったそうです。一方、女性も家庭菜園で収穫した季節のお野菜を、故人様にお渡ししていたそうです。
そうやってふたりは長い間「季節の交換」をしていたのです。
「入院していると聞いてお見舞いに行こうと思っていたんだけど、こんなに急に亡くなるとは思ってなくて。今でもお庭にはこんな綺麗な花が咲いているんよ。これからお庭に出ても寂しくなるんやろなぁ」と、お花を包みながらしみじみと話してくれました。
マニュアルにはない、心を通わせようとする気持ち
「私の仕事はご葬儀のお世話をすること」そう一言で言えば済む仕事かもしれません。
しかし人生のお別れのシーンを目の前にして、「人は絶対に誰かと繋がっている」ということを日々実感できる仕事なのです。
マニュアルどおりであれば、AIでもできる仕事かもしれません。でもそっと手を差し伸べ、声をかけることができるのは、心が通う人間にしかできないことだと、別れを前にした方々のあたたかいエピソードに触れると実感するのです。
マニュアルにあるから声かけするということではなく、もし私が今こういう言葉をかけたら、相手はどのような気持ちになるだろうという想像力を忘れず、マニュアルどおりの言葉を使うときでさえも、きちんと気持ちを添えてお声かけができればと思っています。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。