2018.12.11原点に戻って【想いを筆にしたためる】ということ
「一筆」を届ける、そんな些細なことを大切に
私たちが定例でやっていることはいくつかありますが、
そのなかでも、とても大切にしていることがあります。
それはご葬儀が終わった後に、ご遺族に一筆書いたお手紙を渡しているということ。
今回はそのきっかけとなった出来事をお話したいと思います。
飽いてしまったお子様を和ませる、昔ながらの遊び
故人様には5歳の女の子のお孫さんがいらっしゃいました。故人様の娘さんファミリーは関東にお住まいで急なご葬儀のため、娘さんを連れて慌てて故郷に帰ってこられました。
お通夜からお葬式まで、ご遺族の皆さまは控え室で過ごすのですが、子どもさんはやはり少々飽きてきます。
テレビを観たり本を読んだり、外に出てみたり…。大人たちはあの手この手で楽しませようとするのですが、まだお葬式という出来事に実感のわく年齢ではありませんので、どうしても持て余してしまいます。
また急なご葬儀だったこともあり、いつも遊んでいるお気に入りのおもちゃなども持って帰るのを忘れてしまったとのことでした。
「何か暇つぶしになるものでもあれば」と呟いていると、同僚が「そういえば…」とロッカーを開けて何かを探し出しました。
そして「あったあった!」と取り出したのが「折り紙」でした。
私には高校生の娘がいますが、折り紙で遊んでいたのはずいぶん前のこと。
すでに折り紙とは縁遠くなっておりましたが、子どもが遊ぶには、使えるツールだったことを思い起こさせてくれたのです。
「そらで折れるのは鶴くらいだわぁ」と私が嘆くと同僚が、
「今はこれがあるから便利よ」と、スマートフォンで折り紙の折り方の動画を検索しだしたのです。
「便利な世の中になったものだわ」と思いながら、同僚と折り紙で猫ちゃんやハート、お花などを作って、そのお孫さんに持っていきました。
するとそのお孫さんはたいそう喜んで、一緒に折り紙を折って遊んでくれました。
とくお気に入りだったのが「リボン」。
お母さんにあげたり、叔母さんにあげたりとみんなに配って回ったり…。
とても賑やかな時間を過ごすことができました。
手渡してくれた折り紙のなかに、直筆でしたためたお気持ちが
ご葬儀のすべてが滞りなく終了し、控え室からご遺族さまが火葬場へ移動するときのことでした。お孫さんがタタタッと駆け寄ってきて、1枚の折り紙を渡してくれたのです。
それは、お手紙の形に折った折り紙でした。
「ありがとう」と言って受け取ると、その折り紙のお手紙の真ん中に大人の字で
「大の葬祭のみなさまへ」と書かれておりました。
中をちらっと覗くと折り紙の裏面に文字が書かれていたので開いてみると
「皆さまの温かい対応と気遣いに心が安らぎました。ありがとうございました」と、お母様からのメッセージが書かれていたのです。
そのメッセージに私はとても感動したと同時に、皆で喜び合ったのを覚えています。
私たちはスマートフォンやパソコンといったデジタルの普及で、アナログなことはどうしても置いてけぼりになってしまいがちな現代に生きています。
声ひとつでお湯が沸かせたり、お買い物ができる時代、本当に便利な時代になったな思います。
弊社もしかりで、文章を書くにしてもメールで文字を打ち込み、最近ではわざわざ「筆をとる」という行為をする機会がめっきり減りました。
そんななか再び原点に戻り、人の温かさに触れることを教えてくれたのが、この折り紙のお手紙でした。ご遺族から教えてもらったこのハートウォーミングな出来事を、私たち自身がご遺族の皆さまにお返しをしたいと思いました。
そして今、私たちはご葬儀を終えられたご遺族の方に一筆箋で
気持ちをしたためてお渡ししている次第です。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。