2021.7.14お花入れの時間は、「あなたを忘れない。」という約束の時間。
ご葬儀で、出棺前のお花入れの後に蓋締めを任されることがあります。
この作業は一見なんでもないと思われがちですが、この蓋を閉めるタイミングを見極めることは、私の中ではとても重要な役目だと思っています。
お花入れの際、いろんなお別れのカタチを目にします。蓋を閉める前の段階でお棺から離れられない人、逆にお棺に近づこうとしない人、その2つのカタチがあります。
お棺に集まっていると、比較的みなさん集まりやすいのかお棺の周囲にいらっしゃるのですが、1人が遠巻きに見ていると、周りの皆さんも同じように遠巻きに見ています。
そんな「お別れをしたいけど、近づいていいのか分からない」という雰囲気で近づけずにいらっしゃる方には「どうぞ皆さま、最後にお別れの言葉をお掛けください」と、お声掛けをしています。
逆にお棺から離れられない場合は、お別れの最中にも感情の波というか、気持ちにキリがつき落ち着くタイミングというものがあるので、それを見極めて蓋締めの案内をしています。
よくあるご質問
お花入れの儀式にはどんな意味がありますか?
A.
お花入れの儀式には、昔から神仏はお花の近くに来てくださると信じられていたため、故人が迷わず極楽浄土に旅立てるよう、願いを込めて亡骸にお花を添えるようになったという説があります。
しかし、お花入れに儀式的な意味はありません。
ですので必ず行わなければならないという決まりはありませんが、お棺を閉じる前、故人のそばに寄り添い、向き合い、直接お顔などに触れられる最期の時間であり、亡くなられた方の旅立ちの準備をする大切な場です。
送別会や卒業式の時、旅立つ人に花を贈るのと同じように、お花にいろいろな想いを託しながら感謝やお別れを伝え、故人様が寂しくないようお見送りされてください。
特に男性は遠慮される方もいらっしゃいますので、悔いの残らないようにお別れをされてください。
また、このとき「最期に何かしてあげたい」と思う気持ちに区切りをつけることができるので、見送る側にとっても大切な意味を持つ時間ではないでしょうか。
お花入れの際、してはいけないことはありますか?
A.
故人のお顔が、お花で隠れないようご注意ください。
そのほかには基本的に「してはいけないこと」はありませんが、お花を投げ入れたり、大きな声で騒いだり、強引に割り込んだり、その場の雰囲気を乱すような言葉や行動は慎んでいただければと思います。
中傷することはもってのほか、故人、参列者の方々を悲しませることはお控えください。
それから、多くのご遺族からお花と一緒に副葬品を入れたいというご希望がありますが、ガラス・貴金属・プラスチック類やお骨に付着しやすいもの、水分量の多いものなど火葬の妨げになるようなものは入れられません。
お棺の中に入れられなくても、火葬後、骨壷の中に入れてご供養できるものもありますので、まずはスタッフにお尋ねください。
入れてはいけないお花はありますか?
A.
枯れかけたお花はできるだけ避けていただいています。
また、故人・参列者のお身体を傷つける可能性のあるトゲのあるお花、お骨に付着してしまうかもしれない色や香りの濃いお花や造花、毒のあるお花は避けたほうが良いとされています。
宗旨宗派によって、樒(シキミ)だけと限られているケースもあります。
ただし、故人がバラが好きだった場合、あらかじめトゲを取り除いて入れることもできます。
ご要望がありましたらスタッフにご相談ください。
事前に、宗教者にふさわしいお花を確認しておくこともおすすめします。
故人が好きだった花の持ち込みは可能ですか?
A.
もちろん可能です。
通常、祭壇やお供えのスタンドからお花を選んでいただき、お棺に入れていただきますが、事前にご用意していただいたお花を入れていただくことが、故人に想いが伝わり喜んでいただけるのではないかと思います。
ぜひお持ちいただき、皆さまの手でお棺の中に入れてあげてください。
例えば、生前お好きだったお花、思い出のお花、大事に育てられた自宅のお庭のお花をご用意いただいたこともありますし、お葬儀が母の日と重なったときにはカーネーションを入れていただいたこともあります。
花束の状態か、1本ずつか、納め方のご希望も承ります。
お花を入れる人の順番は決まっていますか?
A.
順番は決まっていませんが、特にご要望がなければ、故人に身近な方、親交の深かった方からお花をいれていただきます。
喪主からご遺族、ご親族、ご参列者の順に入れていただくことが多いですが、「この方を先に」という方がいらっしゃいましたら、配慮させていただきますのでご相談ください。
皆さまのお気持ちのままにお花を入れられてください。
子どもが故人を怖がらないような工夫はできますか?
A.
納棺の際、納棺師に故人のお顔を美しく整えていただきますので、お子さまが怖がることはあまり見受けられません。
お花を渡すと、積極的に入れてくださるお子さまが多いです。
大人の方が一緒になって、故人にお話されるように入れてあげてください。
ただし、「死」の概念を理解できるようになると、恐怖を感じるかもしれません。
怖がったり泣いたりするときは、お子さまに寄り添ってあげてください。
そばにいることが何よりの支えになります。
「眠っている」という言葉を繰り返し言ってあげることも効果的です。
それでも怖がる場合は、式場の外で待っていただくのも一つの案です。
お花入れの際、特別な演出はできますか?
A.
私たちは「想いを大切にする。」葬儀社です。
ご満足いただける葬儀を目指していますので、ご希望があれば可能な限りご対応させていただきます。
まずは、どんなことでもお聞かせください。
例えば、口元にお酒を含ませてさしあげたり、お棺に思い出の品(好きな食物や洋服など)を入れてあげたりということが一般的です。
バックグラウンドで思い出の音楽や動画を流したり、生演奏という演出や記念撮影も可能です。
※ただし、火葬の時間が決められていますので注意が必要です。
ご遺族が良いお別れができるように努めていますので、ご希望があればぜひご相談ください。
お花入れの様子を遠方の親族にも見守ってもらえるオンライン対応はできますか?
A.
大の葬祭では、ZOOMを活用したオンライン会葬に対応しております。
先方にパソコンやスマートフォン、タブレット端末のご用意があり、インターネット・WI-FI環境が整っていれば、こちらでお式の様子を撮影しながら、出棺時まで中継をさせていただいております。
画面越しに故人と対面していただき、スタッフが代理を務めさせていただくことでご焼香やお花入れもしていただけます。
後日、LINEやメールで動画をお送りすることも可能です。
時代が移りゆくとともに縁ある方々が集う機会が少なくなってきています。
コロナ禍の影響はもちろん、仕事をはじめさまざまな事情で遠方からの帰省が難しい場合、あるいは介護施設や病院にいらっしゃるため参列できない場合もあると思います。
そういった方々にとって、「オンライン会葬」は、大変ご好評をいただいております。
お花と一緒に手紙などを入れることはできますか?
A.
ぜひ入れてさしあげてください。
言葉にならない想いなどを託された大事なお手紙は、故人へ想いが届くよう胸元に入れていただいています。
入れる前、式典中にお別れの言葉として読み上げてさしあげるともっとお気持ちが伝わると思いますし、綴った言葉を記憶に残しておきたい場合は、コピーを取っておくと良いと思います。
控え室に便箋もご用意しております。
故人がお浄土で、その手紙を読み微笑んでくれるとうれしいですね。
手紙だけでなく、生前お好きだったものも入れることができますが、火葬場から禁止されている物もあります。
副葬品に関してはスタッフにあらかじめご確認ください。
なお、ペースメーカーを付けている場合も事前にお知らせください。
家族・親族以外の方にもお花を入れてもらうことはできますか?
A.
メインはご家族・ご親族ですが、ご家族のご意向を伺ったうえで、ご友人、親交の深かった方、お世話になった方など、ご参列されているすべての方に立ち会っていただきたいです。
最期のお別れですので、故人にもきっと喜んでいただけると思います。
ただし、コロナ禍の状況下では、密集を避けるため極力ご家族・ご親族だけでのお花入れをお願いしており、その他の方に関しましては、検温やアルコール消毒など感染予防対策を徹底させていただいたうえで、ご要望を伺っております。
よくある質問は、大の葬祭スタッフがご遺族からよく聞かれるご質問を掲載しています。
質問内容と回答は、適宜更新されます。
また、大の葬祭では、LINE公式アカウントにてスタッフによるチャット相談を実施しています。
終活/お葬式/ご供養のご相談などお気軽にお問合せください。チャットは下記のバナーリンクから友だち追加で行うことができます。
みんながきちんとお別れできるようお棺の蓋を閉めるタイミングを見極める
記憶に残らないけど心に刻まれる、心が震えたお花入れの瞬間
あるお葬式のお花入れの場面をお話します。
故人は若くして亡くなられ、残された奥様との間には3歳の娘さまと1歳になったばかりの息子さまがいらっしゃいました。2人の幼子は、まだ自分の父親になにが起きたのか、もちろん理解できません。そんな中式は進行していきました。
娘さまは喪主であるお母さまの膝の上、息子さまは眠たくてぐずったので叔母さまに抱かれて会場を後にしました。
そして、出棺前のお花入れの時がやってきました。
故人を偲ぶため、ご遺族の方をはじめ多くのご友人の方がお棺を囲み、涙を流しお声がけしながらお花を添えておりました。
その光景は、故人がどれだけ多くの方に愛されていたか分かるほどに、そのお別れを惜しむ声が会場に響いておりました。
そしてタイミングを見て、そろそろ蓋に手をかけ締めようとした瞬間、
「待って〜!」
と叫ぶ声が聞こえてきたのです。
声の主に目を向けると、席を外された叔母さまが目を覚ました故人様の息子さまを抱っこして小走りでかけてきたのです。
息子さまにパパの最期のお顔を見せてあげたかったんだと思います。
目を覚まされた息子さまはしっかりとパパを見ているようでした。
叔母さまが最後のお花を息子さまの手に握らせ、そのお花をお棺の中に添えて蓋を閉じました。
まだほんの1歳です。
成長していく過程で、彼の記憶にはその光景はないかもしれない。
でも最期にご対面したことは息子さまにとってだけではなく、故人とそのご遺族にとっても大きな意味があったのではないでしょうか。
私自身も今年の2月に祖母を亡くしました。
葬儀の後出棺し、火葬棟に到着後、時間が迫ってたというのもありますが、お棺の中の祖母の顔をまったく見ることができませんでした。
自分の経験と自分が出会った光景をみさせていただいて、改めて出棺前の蓋閉めのタイミングというのは、葬儀においてすごく大切だなと感じております。
場の雰囲気を読み、ちゃんと区切りが付けられる様にと常に心かげています。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はありません。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じ、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想いのストーリーをご紹介いたします。
[このエピソードは私が担当しました]
大の葬祭 葬祭ディレクター 川野 嘉之