2018.3.12”想いを大切に” ボランティアを通して再確認
被災した津久見市へ、自分にできることのお手伝い
今回は葬儀のお話ではなく、私のプライベートでのお話をしたいと思います。
2017年10月、台風18号の影響で大分県津久見市と臼杵市が被災しました。とくに津久見市の被害は大きく、普段穏やかな津久見川が想定を超える水位によって氾濫し、多くの家屋が浸水被害にあいました。
きっかけは「90%ボランティアが足りていません」という報道を見てから。その後友人を誘い、ボランティアへ行くことを決意しました。
もともと行動派な性格ではない私が、なぜボランティアに行ったかというと、やはり現場を見て「できることならば助けてあげたい、なにか手伝いたい」という気持ちになったからです。
現地に到着してから、まずはボランティア団体が設置された社会福祉協議会に行きます。そこで登録をして、チームに振り分けられ各箇所へ派遣されていきます。
ふと小学校から贈られたメッセージ入りのタオルに目を向けると、子どもたちからの感謝の言葉が綴ってありました。読むとグッと込み上げて来るものがありました。
2階から出てきた古いレコードに感動。その人の想いに触れる
私たちがボランティアに訪れた先は、ご年配のご夫婦が住まれているピアノ教室。友人と約2~3時間ほど手伝わせていただきました。
中へ入ると1階はすでに泥を掃き出し、なにもなくがらんとしていました。2階は物置として使われていたようで、要望をお伺いすると「2階の物を降ろしてほしい」という事でしたので、順番に降ろしていくことに。
すると押し入れや倉庫から、昭和初期のレコードやカセットがたくさん出てきました。それらを全部持って降ろすと「これ探してたのよ」と、奥様が懐かしさのあまり声を上げました。
大変感動されている様子を見て、自分がここでボランティア活動をして、少しは良いことができたかなと感じることができました。
少しの時間ですが、被災した時の状況を聞かせていただきました。
台風当日、このピアノ教室は胸元あたりまで水に浸かり、ピアノから音響関係の機材までほとんど全滅してしまったそうです。2階に保管してあった昔の大切な品は流されずに残っていたことだけが、唯一の救いだったと。
今回それを運び出し確認することで、ご夫婦にとって「復興」への糧や励みになったのだと思うと、その場面に自分が居合わせたことが、私にとっても救われる出来事となりました。
故人様をお見送りする仕事を通して、ボランティア活動で感じたこと
私の仕事は故人様とのお別れをしのぶお手伝いをすること。
これまでお別れの儀式のなかで生まれる、数々の想いにたくさん触れてきました。そしてできる限りその想いに寄り添ってお見送りをさせていただきました。
今回ボランティアを通して、同じく「想いを大切にする」という事を実感しました。
そして幸いだったのが、この台風で人的被害がなかったこと。もし人的被害があったのならば、被災された皆さんのお顔に笑顔が生まれていただろうか?ふとそんな疑問を感じました。
ボランティアの最中、被災された方々にお会いしましたが、時に笑顔をみせ皆さんお互い元気づけあいながら、前向きに作業をされていたのが印象的でした。この笑顔があったからこそ、自分たちボランティアも頑張れたのかもしれません。
天災に人はかないません。大分県はかつては自然災害が少ない場所でしたが、今や気候変動でどこで災害が起きるか分からない時代になってきています。
大分大学でも、災害対策を深化させるため、災害前から復旧・復興段階までの連携を図る研究組織「CERD(サード)」が発足したと聞きます。教育機関も社会貢献に精力的に取り組んで、若者の地域貢献度を高めてもらえるのはこれからの日本の将来へ向けて素晴らしい取り組みだと思います。
「備えあれば憂いなし」の言葉どおり、いつ来るか分からない災害を対岸の火事と思わずに、いつ何時も備えておきたいものです。
そして、悲しい不幸が少しでもこの世からなくなりますように。そう祈ってやみません。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。