2018.2.13お別れに後悔を残さない。ご遺族への声かけを大切に
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。
思い出がたくさん詰まった祖母との別れ。会えなかった後悔
先日担当させていただいたご葬儀で、おばあさまを亡くされたお孫さまの話です。
そのお孫さまは福岡の大学に通われている女性で、
「おばあちゃんって自分でなんでもする人だったんです。お味噌も手作り味噌だったし、梅干しも自分で干したり。もう食べられないのが残念です。もっとちゃんと習っておけばよかった」
と、おばあさまのお話や、ふたりの想い出を語ってくれました。
ご葬儀の日も、早い時間から外に出て想いにふけっているようでした。
霜が降りるほどの寒い朝だったので私は「大丈夫ですか?お寒くないですか」と声をかけさせていただきました。
その時も、色んなお話をして下さり、お孫さまは控え室へ、私は事務所に戻りました。
しばらくすると、コンコンと事務所をノックする音。ドアを開けると、先ほどのお孫さまがお椀を持って立っていらっしゃいました。
両手に持ったお椀からは湯気が立ち、なんだかとても香ばしい匂いが…。
「これ、田舎あられです。煎茶に入れて飲むと美味しくて温まるんですよ。あられ茶漬けって呼んでました。これもおばあちゃんがよく作ってくれたんです」
とわざわざ持ってきてくれました。
いつもの煎茶にあられを浮かべるだけでこんなに美味しくなるとは…。おばあさまの暮らしの知恵がお孫さまに受け継がれ、すっかり私は心まであたたかくなっていました。
胸を張って見送るお孫さま、後悔をご葬儀で和らげる
お孫さまは、葬儀前からずっとおばあさまの死に目に会えなかったという後悔の念を抱えつつも葬儀に参列されました。
葬儀がしめやかに行われ、いよいよ最後のご出棺に差しかかったときのこと。私は棺を後ろの方で押していたのですが、ちょうどお孫さまが私の隣にいらっしゃったので、
「最後の機会ですし、よかったらおばあさまの棺を一緒に押してお送りしませんか?」
とお声がけしました。
するとこわばっていた表情が少しほころび、
「じゃあ、私が…」
と最初は控えめに、最後は胸を張って押してくれました。
私自身の話ではありますが、祖母の葬儀の時、”気付いたらいつの間にか終わっていた”
というような感じでしたので、「あの時もっと積極的にいけばよかったな」とご葬儀が終わってから後悔しないように、何か残してあげたいという一心で声を掛けさせていただきました。
そして実はこの話にはまだ続きがあります。
その2週間後におじいさまが亡くなったのです。
おじいさまのご葬儀の担当は私ではなかったのですが、出棺の時を拝見することができました。
そのとき、お孫さまは棺にしっかりと手を添えて胸を張ってご出棺されていました。
おばあさまのご葬儀の時に一言添えさせていただいたことで、おじいさまの時に積極的に「その場に立っていいんだ、もっと近くにいていいんだ」という気持ちを持っていただけたのかなと、勝手ながら思わせていただいております。
大切な方との最期のお別れに「後悔」という言葉が心のどこかにあるのであれば、私たちスタッフの一言によって、少しでもその「後悔」を和らげていただけたらと思います。
肌を刺すような寒い朝、あの日にいただいた「あられ茶漬け」の湯気と香りを想い出せば、
いつでも気持ちがあたたかくなります。