2017.12.05花言葉がつなぐ、最後の想い出
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。
永遠に変わらない、ご婦人たちの関係
供花(きょうか)とは、故人に供えるお花のことです。
供花には故人の霊を慰め哀悼の意を表するという想いと、祭壇や会場を花で飾ることによって、遺族の悲しみを和らげるという意味があります。
ご葬儀が終わりますと、参列者の方がお花を取りにこられ、皆様が選ばれたお花をスタッフがお包みするという一連の流れがございます。
時に、こちらでお花を選び包ませて頂いて、
「よろしければ、お花はいかがですか?」
と、皆様にお声がけをさせていただいております。
今回は、そんなお花にまつわる出来事を話したいと思います。
あるお式でのこと。
いつものように供花をお持ち帰りくださるよう、皆様にお声がけしておりましたところ、1人のご婦人からご質問を受けました。
「このお花持って帰ってもいいんかな? これはね、亡くなったよしえさんが好きなお花なんよ。お式の想い出として持って帰りたいんやわ」
それは、紫色の小花が一枝に集まった上品で可憐なお花でした。
お花についてはユリとキク程度の名前しか知らない私。まさか故人様のお好きだったお花が供花の中にあるとは、思ってもいませんでした。
「お花に造詣が深いのですね。なんというお花なのでしょうか?」
と、ついご質問してしまいました。
「このお花はスターチスっていうんよ。よしえさんが好きでよく生け花で使っていた花があるなんて、何かのご縁を感じてしまうわ」
と、涙ぐみながら故人様との思い出を語ってくださいました。
供花から咲いた、故人様との想い出
おふたりは、この町で生まれ、一緒に育った幼馴染だったそうです。結婚してからもその関係は続き、お互いの家を行き来する仲だったそう。
喜びも悲しみも悩みも、2人で分かち合ってきた関係だったと言います。
そして故人様が入院し今日に至る前まで、お2人のご趣味である生け花教室に通っていらっしゃったそうです。
スターチス…、その花が気になった私。
中座して事務所に戻り、パソコンでその花を検索してみたのです。そしてあることを発見し、どうしてもご婦人にお伝えしたく、足早に会場に戻り、彼女を探しました。
今にも葬儀場から出そうなご婦人を呼び止め、一言お伝えしました。
「スターチスの花言葉は、”永遠に変わらない”、だそうです。」
不覚にも感動してしまい涙ぐみそうになった私はそれを悟られまいと、
それ以上言葉を続けられずにいました。
するとご婦人から、
「こんなに長く生きちょんとね、あの子と私の思い出は絵巻物になるほどたくさんありすぎるんよ…。どれも忘れたくない2人の歴史なんやけど、もう最近はどんどん薄れていくんよ。よしえさんはいなくなってしまったけど、私との関係は永遠に変わらないっちゅうことなんよなぁ。わざわざありがとうね、お姉さん」
もう結構なご高齢であろうご婦人。
お見送りするその後ろ姿は、なんだか女学生だった頃のおふたりが、笑いながら歩いている、そんな幻想を抱かずにはいられませんでした。
年齢を重ねられて、長い生涯を終えられる。別れは寂しいだけじゃない、素敵なお別れのカタチがあるのだと、学ばせていただきました。
その方と故人様の関係はどれくらい深くて、どれくらい大きなものだったのだろうか、想い出はいくら想い続けていても、少しずつ忘れていくものですが、
それを形にして残していきたいというその方の想い。
ただ、お花を包んで渡すという業務をこなすだけになっていないか、受け取った方がどういった想いで持って帰られるのか、お花を手渡したその先にもまた、持って帰られた方の“想い”があるということを、考えずにはいられない出来事となりました。