2019.8.21搬送のプロとして日々ていねいに、そして襟を正す
目次
そっと寄り添う、搬送課としての役割
私は大の葬祭の「搬送課」に勤務しています。
搬送課は故人様のご遺体を病院からご自宅、またはご自宅から会館へと搬送する仕事で、弊社では、24時間365日、ご葬儀のご依頼があったときに対応できるよう「搬送課」があります。
これは私の持論なのですが、ご遺族さまと接する機会の多い葬儀担当とは少し異なり、搬送課はどちらかというと前に出て積極的に接することは控えようと、心がけています。
たとえば、夜間にご葬儀のご依頼が入った時は、お迎え・ご安置の際に、こちらからは名刺をお渡しし名前も名乗るのですが、葬儀担当となるのは搬送課ではなく日勤スタッフですので、私ども搬送課のスタッフは、ご遺族とスムーズに信頼関係を築けるように、あまり自分が出しゃばらないことを意識的にして任務にあたっています。
声をかけられて驚いた、ある冬の朝の出来事
その日は少し灰色がかった薄曇りの空からハラハラと雪が舞う、とても寒い朝でした。
私はご連絡を受け、病院でお亡くなりになった故人様をお迎えに行きました。
いつものように故人様をお迎えして、粛々と職務を遂行しておりましたところ、ご遺族様より
「親戚の方がもう少ししたら来るので、少し待っていただけますか?」とお願いを受けました。しばらくして親戚の方が到着され、みなさまでお別れをされていました。
再会、そして名前を呼んでくれたことへの感謝
私はお邪魔にならないよう、少し距離を置いて車の脇に立っておりました。すると一人の男性がニコニコして近づいてきました。
そして私に
「また、あんた来たんやな。狩生さんやったかな。毎度ありがとなぁ、よろしくお願いします」
と、おっしゃるのです。
正直驚きました。こんなことはそう滅多にありませんから。
先ほどもお話したように、私は業務の際はなるべく前に出ないように努めてきました。しかし私の顔を覚えている方がいて、さらに声までかけてくださったことに驚きを隠せませんでした。と同時に、ちょっとうれしかったのも事実です。
男性のお顔を拝見したところ「以前葬儀の時に私がお迎えに行った時の方かな?」と思い、
お名前をお聞きしてみました。するとやはり、1年ほど前に私が搬送させていただいた故人様のご親戚の方でした。
ありがたいと思うと同時に込み上げてくる、身が引き締まる思い
名前を覚えていただけることに感銘を受けたと同時に、搬送課の仕事は、自分でも意識はしておりませんが安全に運転し、ご遺体を搬送するということだけに気持ちが傾きがちになってしまいますが、いつ何時も自分は「大の葬祭」のスタッフである、という自負を持っていたいと改めて思いました。
そして、こちらが知らなくても自分たちの事を知ってらっしゃる方って、実は想像以上に多いのかもしれない、ということも痛感し、気持ちも引き締まりました。
常に謙虚であれ。そして原点を忘れずに
会社で仕事をしているときは、身だしなみや言葉使いに細心の注意を払うのは当然ですが、それ以外の時、とくにプライベートの時と仕事のときの態度や言葉のギャップが大きかったりすると、「あの人、大の葬祭の人なんよ。仕事の時と全然違うのね…」。
そんなイメージを持たれるのは正直本意ではありませんし、相手にとても心証の悪いことだと思うのです。
今回のことも踏まえて、本当に気を付けているのが、「謙虚な態度とていねいな言葉づかい」。
プライベートでも、なるべく優しく伝わりやすいよう心がけて話すようにしています。
そして、いつでも自分の持ち場に誇りを持って、ご葬儀という最期のお見送りの場に携わりたいと思います。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。